初めて泊まった僕などが“このホテル”に付いて云々するのもおこまがしいが、チェックアウトした後も、余韻の長いホテルだ。丁度、小津安二郎の「東京物語」を見た後の様に。
大通りからホテルへ向かう細い坂道を上った突き当たりに建つアールデコ調の瀟洒なホテル。辺りは都心とは思えないほど緑が多く、落ち着いた雰囲気。出版社が多いという場所柄を割り引いても、錚々（そうそう）たる作家たちの常宿となったのも頷ける。設計は日本の教会建築や明治学院大学礼拝堂を手掛けたウィリアム・メレル・ヴォーリズによる。
室内や設備は快適と言え無い部分もあるが、全体として快適、居心地が良い。また帰ってきたくなる何かを持っている。昨今のラグジュアリーホテルには無い歴史と文化なのだろうか・・・。
小さな正面玄関ホールの天井にある美しい照明
フロントで渡されるルームキー。所々欠けているし、カードキーに比べれば重いし嵩張るが、この鍵を三島由紀夫も使っていたかも知れないと古に思いを馳せる。
広くは無い部屋だが趣はある。長期滞在者が多いのだろうか、部屋に比してクローゼットは十分な容量がある。
使い込まれた座り心地の良い椅子。窓を開けると森の香りが滑り込む。
～後編は館内案内～
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